
人生においての神事
人生においての大切な儀式や行事を「人生儀礼(じんせいぎれい)」といい、通過儀礼(つうかぎれい)とも呼ばれます。これらの儀礼は、個人の成長や変化を社会や家族で共有し、祝福したり、今後の幸福を祈ったりする意味合いを持っています。
人生儀礼で神社に行くのは、日本の伝統的な文化と深く結びついているからです。神道では、人の一生は神様のご加護のもとにあり、人生の節目ごとに神様に感謝や祈りを捧げることで、 成長や幸福が得られると考えられています。例えば初宮詣は、赤ちゃんが無事に生まれたことを神様に感謝し、氏子の仲間入りをさせていただき、健やかな成長を祈る儀式。厄払いは、厄年に災厄から身を守り、穏やかな一年となるよう祈願します。人生の節目に神社を訪れることは、日本人に深く根ざした行為であり、神様への感謝と未来への安寧を願う大切な機会といえます。
戌の日(いぬのひ)・安産祈願
「戌の日(いぬのひ)」とは、十二支の11番目「戌(いぬ)」にあたる日のことです。暦には年だけでなく、月や日にも十二支が割り振られており、戌の日は12日に一度巡ってきます。日本では、犬は多産でありながらお産が軽いという特性から、古くより安産の象徴とされてきました。そのため、安定期に入る妊娠5ヶ月目の最初の戌の日に、安産祈願のために神社やお寺へお参りし、お腹に腹帯(岩田帯)を巻くという風習があります。もちろん、戌の日に必ずお参りしなければならないということではありません。妊婦さんの体調や都合を考慮して日を選んでください。

初宮参り(お宮参り)
赤ちゃんが無事に生まれたことを地域の守り神である産土神(うぶすながみ)様に感謝し、 末永い健康とご加護を祈願します。一般に男児は生後32日後、女児は33日後に参拝するとされていますが、これにこだわることなく、生後一か月を過ぎて、赤ちゃんやお母さんの体調の良い日に参拝するようにしましょう。

七五三詣(しちごさんもうで)
七五三詣は、日本における子どもの成長を祝う伝統行事で、主に3歳の男女児、5歳の男児、7歳の女児を対象に行われます。この風習は、子どもが無事に成長したことに感謝し、今後の健やかな成長を祈願するため、神社に詣でる習慣として根付いてきました。
七五三の起源は平安時代にまでさかのぼるとされ、3歳の「髪置(かみおき)」、5歳の「袴着(はかまぎ)」、7歳の「帯解(おびとき)」という当時の貴族社会における通過儀礼が基になっています。江戸時代に入ると、これらの風習は武家や町人の間にも広まり、やがて現在のような形に整えられていきました。現代においても七五三は、家族が子どもの成長を祝い、写真撮影や晴れ着を通して記念とする大切な行事です。そして、神社にお参りすることで、日本人の伝統的な信仰心や家族の絆を感じる機会ともなっています。

厄払い(やくばらい)
厄年の概念は平安時代にはすでに存在していたとされ、陰陽道などの影響を受けて発展してきました。陰陽道では、人生の特定の年齢において「陰と陽のバランス」が崩れやすくなると考えられており、それが「厄年」という形で社会に定着していきました。
男性の25歳・42歳・61歳、女性の19歳・33歳・37歳などが「本厄」とされる年齢で、これらは体力や社会的責任が大きく変化する節目にあたることが多く、心身の不調や環境の変化により災厄を招きやすいとされてきました。また、その前後の年は「前厄」「後厄」と呼ばれ、合わせて注意が必要とされます。
さらに、古代中国から伝わる占術である九星気学(きゅうせいきがく)の考えを基にした「方位除け」「八方除け」も厄年に当たります。「九星」とは、生まれたときに受ける「気」を9つに分類したものです。
現代においても、厄払いは多くの人々にとって大切な節目の儀式とされ、特に本厄の年には家族や友人とともに神社に参拝する人が多く見られます。これは単なる迷信ではなく、人生の折々に立ち止まり、自身の健康や生活を見つめ直す良い機会ともなっているのです。

歳祝い(としいわい)
年祝いとは、一定の年齢に達したことを祝う日本の伝統的な習わしで、長寿や節目の年を迎えたことに感謝し、これからの健康や幸せを願うお祝いのことです。
一般的には還暦(60歳)をはじめ、古希(70歳)、喜寿(77歳)、傘寿(80歳)、米寿(88歳)、卒寿(90歳)、白寿(99歳)、百寿(100歳)に行うことが多く、年齢を重ねることを尊び、これまでの歩みに感謝し、今後の健やかな日々を祈念する意味を持つ、人生の大切な通過儀礼のひとつです。
61歳 | 還暦―かんれき― | 誕生年に60を加えた年、つまり数えで61歳。赤子に戻り、もう一度生まれ変わって出直すという意味。長寿祝いの色は赤・朱。 |
70歳 | 古希―こき― | 中国・唐の詩人である杜甫の詩の一節「人生七十古来稀なり」という言葉に由来。70年生きる人は古くから稀(まれ)であるという意味ですが、現在は 稀なことでもなくなったため、漢字の「稀」が「希」になっています。長寿祝いの色は紫。 |
77歳 | 喜寿―きじゅ― | 「喜」を草書体で書くと「㐂」。分解すると「七・十・七」に読めることが由来。長寿祝いの色は紫。 |
80歳 | 傘寿―さんじゅ― | 「傘」の略字「仐」を分解すると八十となることに由来。長寿祝いの色は金茶。 |
88歳 | 米寿―べいじゅ― | 米の字を分解すると八十八となることに由来。長寿祝いの色は黄色・金茶。 |
90歳 | 卒寿―そつじゅ― | 「卒」の略字「卆」を分解すると、「九」と「十」になりことに由来。長寿祝いの色は紫・白。 |
99歳 | 白寿―はくじゅ― | 百」の字から一を取ると「白」になることが由来。長寿祝いの色は白。 |
100歳 | 百寿―ひゃくじゅ― | 100歳であることから百寿あるいは紀寿(きじゅ)とも。紀は一世紀を表すことから。 寿祝いの色は白・桃色。この歳から毎年祝います。 |

